遺留分制度の見直し (2)

遺留分制度の見直しの続きです。

(1)以外にも、いろいろと改正がなされています。

具体的な改正事項としては

(ア)遺留分算定の基礎となる財産の明確化と限定

(イ)負担付き贈与の場合の規定の明確化

(ウ)相続債務のある場合における遺留分侵害額の算定の明確化

などがあります。

(ア)遺留分算定の基礎となる財産の明確化と限定

明確化

これについては、改正前の民法1029条が、「遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。」とされていたところ、今回の改正に伴って、1029条は、削除され(というか、1028条から1041条までが削除)て、対応する1043条で、

遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十三条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。

とされています。

限定

改正前の民法1030条が、「贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。」としていたのですが、これは、相続人以外の第三者に対して贈与がなされた場合に適用される場合の規定で、相続人に対してなされた場合には、時期を問わず、すべてが遺留分を算定するための財産の価額に算入されるとされていました。これだとあまりにも古い贈与まで算入されることになり場合によっては、法的安定性を損なうのではないか、という懸念があるとされて、相続人との間の実質的公平とのバランスという観点から、相続開始の前の10年間にされたものに限り、遺留分を算定するための財産の価額に含まれるものとされました。

条文としては、

第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
(略)
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。

(イ)負担付き贈与の場合の規定の明確化

これは、旧法においては、旧1038条において、目的財産の価額からふたの価額を控除したものについて減殺を請求することができることとされていたところ、この取扱が、目的物の価額の算定をするにあたっての扱いの規定であるの(一部算入説)か、目的財産の価額を全額算入しつつ、減殺の対象をその控除後4の残額に限定した趣旨なのか(全額算入説)という対立がありました。

残っている遺産として、2000万円の土地があり、以前は、4000万円の土地もあって、2000万円の借金を負担する代わりに、4000万円の土地を子Aに贈与するということにした場合を例にとります。
(相続人は、子供AおよひBのみとします)

一部算入説というのは、子Aに、2000万円の贈与がなされたとするものです。この場合は、財産の総額は、4000万円として計算されます

全部算入説というのは、総額6000万円の財産があって、減殺の対象が控除後の残額に限定されるとして、この場合は、4000万円は、減殺の対象ということになります

新法のもとでは、1045条1項で

負担付贈与がされた場合における第千四十三条第一項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。

とされています。

(ウ)相続債務のある場合における遺留分侵害額の算定の明確化

これは、遺留分侵害額を算定するにあたって加算すべき相続債務の額について、ア)法定相続分を前提に算定するという考え方 とイ)指定相続分を前提に計算するという考え方 とがあるところ、実際に遺留分権利者が相続人内部で負担すべき額を基準とすべきという後者の説を採用したものです。

条文としては、 1042条の遺留分から、控除される額として

1046条2項3号

被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額

とされています。