令和元年民事執行法等の改正(3)その他の事項

令和元年民事執行法等の改正においては、

(1) 債務者の財産状況の調査に関する規定の整備

(2)子の引渡しの強制執行に関する規定の整備

をメモしてきました。

ということで、残りの、

(3)その他の事項についてメモをしていきましょう。

具体的には、

ア)不動産競売における暴力団員の買受け防止に関する規定の新設

イ) 債権執行事件の終了に関する規律の見直し

ウ) 差押禁止債権に関する規律の見直

になります。以下、概要等によって立法趣旨等を検討します。

ア)については、現行の民事執行法においては、暴力団員等の買受け自体を制限する規定がないことによって、全国の暴力団事務所は約1700箇所のところ、約200の暴力団事務所の物件が不動産競売の経歴を有していることが判明しています【警察庁調べ】。

我が国は、現在、 「世界一安全な日本」創造戦略(H25.12閣議決定)を定めて、その実現を配慮しているところ、そこでは、不動産競売・公売への暴力団の参加防止等の方策について検討することがうたわれています。

このような背景のもと、裁判所の判断により暴力団員,元暴力団員,法人で役員のうちに暴力団員等がいるもの等が買受人となることを制限するとともに、暴力団員等でない者が,暴力団員等の指示に基づき買受けの申出をすることも
制限するというのが改正の方針ということになります。

概要の2頁の図より

 

 

 

 

 

 

イ) 債権執行事件の終了に関する規律の見直し

これについては、,債権者が取立ての届出等をせずに長期間(2年以上)にわ
たって漫然と事件を放置し続けている場面において,執行裁判所の決定により事件を終了させるための仕組みを導入するということです。

条文としては、

第百五十五条に次の四項を加える。
5 差押債権者は、第一項の規定により金銭債権を取り立てることができることとなつた日(前項又はこの項の規定による届出をした場合にあつては、最後に当該届出をした日。次項において同じ。)から第三項の支払を受けることなく二年を経過したときは、同項の支払を受けていない旨を執行裁判所に届け出なければならない。
6 第一項の規定により金銭債権を取り立てることができることとなつた日から二年を経過した後四週間以内に差押債権者が前二項の規定による届出をしないときは、執行裁判所は、差押命令を取り消すことができる。
7 差押債権者が前項の規定により差押命令を取り消す旨の決定の告知を受けてから一週間の不変期間内に第四項の規定による届出(差し押さえられた金銭債権の全部の支払を受けた旨の届出を除く。)又は第五項の規定による届出をしたときは、当該決定は、その効力を失う。
8 差押債権者が第五項に規定する期間を経過する前に執行裁判所に第三項の支払を受けていない旨の届出をしたときは、第五項及び第六項の規定の適用については、第五項の規定による届出があつたものとみなす。

となっています。取立届については、つい、失念してしまうので、忘れずに届けるようにしましょう。

ウ) 差押禁止債権に関する規律の見直

これは、現状では,債務者が差押禁止債権の範囲変更の制度の存在を十分に認識していない,債務者が申立ての準備をしている間に差押債権者によって差押債権が取り立てられてしまう,などの理由により,この制度があまり活用されていない、という背景があります。

そこで、差押禁止債権の範囲変更の制度の存在を,裁判所書記官が債務者に対して教示するとともに、 給与等が差し押さえられた場面において,債務者が差押禁止債権の範囲変更の申立てのための準備期間を1週間から4週間に伸長(この準備期間中は取立てができない)したものです。

条文としては、民事執行法145条ですが

4 裁判所書記官は、差押命令を送達するに際し、債務者に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、第百五十三条第一項又は第二項の規定による当該差押命令の取消しの申立てをすることができる旨その他最高裁判所規則で定める事項を教示しなければならない。

となります。また、同155条は、

2 差し押さえられた金銭債権が第百五十二条第一項各号に掲げる債権又は同条第二項に規定する債権である場合(差押債権者の債権に第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)における前項の規定の適用については、同項中「一週間」とあるのは、「四週間」とする。

となります。

令和元年民事執行法等の改正(1)債務者の財産状況の調査に関する規定の整備

民事執行法等の改正のひとつの大きなテーマは、債務者の財産状況の調査に関する規定の整備になります。

判決をもらっても、最終的には、執行ができなければ、絵に書いた餅になります。ところが、なぜか我が国では、判決手続までについては、比較法的な検討が進んでいたのですが、執行が効果的になされるか、という点についての興味が比較的(というか、かなりの程度)低かったような感じです。

今回の改正で、かなりの程度が見直しされたということができるかと思います。あとは、実務で実際にどのような運営になるか、ということが注目されるかと思います。

この規定の整備は、1 現行の財産状況の調査に関する規定の整備 と 2 第三者からの情報取得手続の新設にわかれます。

1現行の財産状況の調査に関する規定の整備 は、さらに、(1)実施要件の見直しと(2)手続違背に対する罰則の見直しにわかれます。

(1)は、197条1項において「執行力のある債務名義の正本(債務名義が第二十二条第二号、第三号の二から第四号まで若しくは第五号に掲げるもの又は確定判決と同一の効力を有する支払督促であるものを除く。)を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない」となっていて、民事執行法22条における

「(債務名義)第二十二条

 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。

(略)
二 仮執行の宣言を付した判決
三 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)
三の二 仮執行の宣言を付した損害賠償命令
三の三 仮執行の宣言を付した届出債権支払命令
四 仮執行の宣言を付した支払督促
(略)
五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)」
となっているところから、これらが除かれていました。
しかし、金銭債権についての強制執行の申立てに必要とされる債務名義であれば、いずれの種類の債務名義についても、財産開示手続の申立てをすることができるようにしました。
(2)は、財産開示期日において、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓を拒んだ開示義務者や、財産開示期日において宣誓した開示義務者であって、正当な理由なく(略)陳述すべき事項について陳述をせず、又は虚偽の陳述をしたものについての罰則を強化するものです。213条(陳述等拒絶の罪)は、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処するとなっています。
2 第三者からの情報取得手続の新設
これは、具体的には、(1)不動産にかかる情報の取得、(2)債務者の給与債権に係る情報の取得 (3)債務者の預貯金債権等に係る情報の取得が、整備されることになりました。
そもそもですが、第四章が、債務者の財産状況の調査となって、財産開示手続に加えて、「第二節 第三者からの情報取得手続」となっています。
(1)については、執行裁判所が、登記所に対して、強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるものについて情報の提供をすべき旨を命じなければならない、とされています(205条)。
(2)については、債務者の給与債権に係る情報の取得として、執行裁判所は、特定の場合に、市町村や、年金機構等に対して、給与債権にかかる情報を提供しなければならないとしています(206条)。
(3)については、債務者の預貯金債権等に係る情報の取得として、執行裁判所は、銀行等に対して、預貯金債権(略)に対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるものに関する情報を提供すべき旨を命じなければならないとしています(207条)。